A Haunting In Venice [DVD]

もはや原作のポアロ像は関係なくて、映画として、切なくても救いのある、実に丁寧で上品な作品に仕上がっている。単なるホラーな話にも傾倒することはなく、事実と心理のはざまを冷静にかつ丁寧に見つめるポワロ像は、このリメイクポアロシリーズの真骨頂で、まあアガサクリスティなので、状況証拠からポアロの説明で、犯人が落ちるという設定は仕方ないが、その状況証拠になるいくつかのシーンを、強引にならないように挟み込み、しかもちゃんと強調している演出はお見事といえる。こうやってかつてヒット作と言われた作品を、現代の能力でリメイクするのは大変で、どうしても旧作に対するオマージュや意地を目立たせようとしてしまい、結果として駄作に陥るが、本作はそんな真似は一部のマニアでないとわからないように限定しており、しかもあまり重要視せずに、新しいポアロとして製作されている。ベネチア（ベニス）の街並みや世界観もいい。昼間は美しく、夜は海独特の怖さに包み込むのを、多彩な角度の描写で画面いっぱいに映し出している。近年の映画としても、かなり製作陣が頑張ったある意味妥協を許さない映画である。

１作目は流石に何度も映画化される作品という感じの展開で面白かった。２作目はあっけなく途中で犯人が分かってしまい、出演陣の割に駄作だなと思った。今作はベネチアの風景、歴史のありそうな建物、霊が絡んだ内容で全体的に暗めの描写と映像的に楽しめた。ただ、ポワロの謎解きに対する説得力だけでは面白い作品が書けなくなり、事件とポワロの推理と超常現象も絡めた展開なのかな？と、変に勘ぐってしまう仕上がり具合で、霊による仕業感を出すためかもしれないが、一人一人事情徴収をしながら、医者の死から唐突に解決に向かう展開に、もし原作がそうだとしても、映画化の段階でもう少し工夫できたのではと思ってしまう。でも何より言いたいのは・・・字幕の表示がおかしい！0.1秒で消えてしまい確認できないかと思うと、セリフはどんどん進んでいるのに表示内容は15秒くらい変わらない、そんな場面が３回ほどあり、事件の説明の部分は1／３程度しか認識できない。吹き替え版に変えようかと思っても、私が鑑賞したタイミングに吹き替え版がない。DVD（あるいはBlu-ray）がおかしいのか、Amazonの翻訳機能がおかしいのかわからないが、もっとまともなサービスをしろと言いたい。

というわけではないですが、ベネチア素敵ですね。いつかは行ってみたい。話のテンポは良いけど、いまいち盛り上がりにかける気がするのは事件ものだからか。解決の時も淡々としててもうひとひねり欲しかったな～。子離れできない母親は恐ろしいものですね。しかし最後水位が上がった水に（誤って）落ちたけどそんな簡単に死ぬか？まあそこは映画だから仕方ないか。悪くはなかったけど４よりの☆３つ！

他の方のレビューでは、「平凡な感じ、意外と驚くようなトリックがない、聞いたような謎解き」と散々ですが、面白ポイントはそこではなく、面白いのは、眼鏡の賢い子供レオポルドの登場です。あまりに賢いので、思わず「見た目は子供、頭脳は大人のコナンくんですか？」って突っ込んでしまいました。しかも父親がちょび髭で、まるで小五郎のようです。（笑）さらにこの子供がポアロに話しかけるセリフが、遠回しに「あれれ、おっかし～な～」的なセリフに聞こえ、しかもこの父が途中でソファに寝かされます。これじゃあ「眠りの小五郎ですやん～」（笑）監督は新しいポアロ作品を作りだすために、間違いなく「名探偵コナン」ネタを導入したようです。という訳で、監督捨て身の”コナン君”映画なのでした。

原作はクリスティの「ハロウィーンパーティ」とのことですが、もはや原型を留めておらず概ねオリジナルストーリーです。それが功を奏したのかクリスティの呪縛が解け、前2作よりも大胆かつ創意ある工夫が凝らしてあるように感じました。密室劇のセオリーは守りつつ、「死霊館」風のホラーっぽい演出もあったりして楽しめます。ただし終始画面が暗いのでちょっと見づらいかもですね。ちょっと引っかかったのは、ケネス・ブラナー版ポワロ初登場のアリアドニ・オリヴァー夫人。原作にも登場する彼女はポワロと何度も共に事件を解決してきた旧友なんですが、ちょっと扱いが酷いような気が。多分次作には出ないだろうなw

オリエントやナイルが良すぎたので、この作品はどうかと思います。

とにかく画面が暗い。そして、テンポが速いというか、説明不足。

映像がいちいち美しく見応えがあった。